〜知って得する健康講座 第49集〜 タバコの害 〜動脈疾患〜 医師 末綱 靖
「百害あって一利なし」とはまさにタバコです。喫煙により血管が収縮し、一時的に 血圧が上がるばかりでなく血液の流れを悪くし、血液が凝固しやすくなり、動脈硬化 の原因となります。今回は腹部大動脈瘤及び閉塞性動脈硬化症についてお話させてい*ただきます。
●腹部大動脈瘤(AAA)
日本人の腹部大動脈の正常径は通常 1.5〜2.0cmですが、何らかの原因で大動脈の拡張をきたし、正常の 1.5倍となったものを腹部大動脈瘤(AAA)といいます。すなわち、3cm以上に拡張した状態です。原因として、動脈硬化性 (中膜弾性線維の破壊・消失)、感染性 (細菌による壁の破壊)、炎症性 (非特異性炎症)、先天性 (中膜壊死)などがありますが、完全には解明されてはいません。4cm台の動脈瘤ほとんど破裂せず、非常にゆっくりと大きくなりますが、5cmを越えると 急速に拡大することがあり、5cm以上になったら手術を考えます。動脈瘤は破裂するまでは無症状ですから、サイレント・キラーとも呼ばれます。やせた方は自分で臍周囲の腹部を触れれば気づくはずですが、太った方は、エコーやCT を受けない限り見つかりません(人間ドックを受ければ必ず見つかります)。そよう病院や近くの病院に何十年も通い続けていても、エコーやCT を一度も受けていなければ、見落とされているかも知れません。自身の命を守るのは、病院でも医師でもなく、自分自身の知識と禁煙の決意であることを強調したいと思います。
●閉塞性動脈硬化症(ASO)
閉塞性動脈硬化症 (以下、動脈閉塞) は、内膜肥厚や脂質の内膜下への沈着から内膜潰瘍、血小板吸着、血栓形成、さらにはカルシウムや線維の蓄積により狭窄病変や閉塞病変を来した状態です。症状による分類には、以前紹介したFontaine分類 が有名です。Fontaine I 度とII 度は、整形外科疾患(腰部脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、腰椎分離・すべり症など) の症状と似ていますので間違えられることもよくあります。
■Fontaine分類 (ASO の重症度)
T度:冷感・しびれ感
U度:間欠性跛行 (一定の距離を歩くと脚が痛くなり、立ち止まる。休むとまた同じ距離だけ歩ける。)
V度:安静時疼痛 (夜間、横になると痛む。下肢を下げると少し改善)
W度:潰瘍・壊死 V度とIV度を併せて「重症虚血肢」といいます。
■動脈疾患は全身病
動脈閉塞 (ASO)の危険因子には、喫煙、糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満、遺伝的素因、ストレス等があります。動脈閉塞 (ASO)は全身の血管がやられる、全身病の一症状と考えられます。動脈閉塞患者の 23% に脳血管疾患、23% に虚血性心疾患、28% に糖尿病、50% に高血圧を合併しています。逆に、脳血管疾患患者の37% に動脈閉塞を、虚血性心疾患患者の17% に動脈閉塞を、糖尿病患者の 35% に動脈閉塞を合併しています。
〜家庭でできるリハビリ 第7集〜 膝の痛み その1(変形性膝関節症) リハビリテーション科 仁木 一雅
膝痛は誰もが一生に一度は経験する痛みです。かく言う私も学生時代に運動のやりすぎで未だに膝が痛くなることが度々あります。今回は膝痛の原因として最も多い「変形性膝関節症」についてお話したいと思います。
●変形性膝関節症の症状
正座すると痛い、立ち上がり・座るときに痛い、動かし始めに痛む、歩く・走ると痛い、階段昇降で痛む、膝が急に「ガクン」とする、動かすと音がする、膝が伸びない、膝に水が溜まる、じっとしていても痛い、など変形性膝関節症の症状は様々ですが これらは膝関節の中にある関節軟骨の磨耗・損傷により炎症が起こることにより出現します。
正常 |
変形性膝関節症 |
正常 |
変形性膝関節症 |
●変形性膝関節症の原因
@ | 老化:高齢者の女性に多く長年の運動や仕事によって軟骨が磨り減ってきた、また 加齢による筋力低下により膝関節の負荷が多くなることも一因です。 |
A | 肥満:体重を支える膝関節は立っているだけで負担がかかってきます。歩く時には体重の約2倍、階段昇降では約7〜8倍の負荷がかかります。例えば5kg太ると歩行時には約10kg 階段昇降時には約35〜40kgの負荷が膝関節には増えます。 |
B | 脚の変形:日本人にはもともとO脚の人が多く見られます。O脚で関節の内側に大きな負担がかかり軟骨が磨耗します。 |
※次回は、膝関節の仕組みと働きについてお話したいと思います。